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特 集

CODE46

www.code46.net


作品データ



ジャン・リュック・ゴダール『アルファヴィル』や、アンドリュー・ニコル『ガタカ』を彷彿とさせる近未来ヨーロッパ映像が上陸する。
人類が避けて通ることのできない科学の進歩によってもたらされる次世代の社会は、主人公二人の純真な愛の前に究極のタブーをつきつけることとなる。

SF映画ファンには『マイノリティ・リポート』での予知能力者・プリ=コグの神秘的なイメージが鮮烈なサマンサ・モートン、本作ではしたたかに暮らしながらも情熱的な恋愛にひた走る女性を演じている。

ウィンターバーグが描いた未来社会。それは驚くほど現実味があるにもかかわらず、未だ描かれたことがなかった社会の姿だ。建築物や交通機関といったハードウェアには変化はないが、ヒトのクローニングや記憶操作、再生医療といった分子生物学技術は合法的に浸透している社会。
これは、ほんの数年後の、あなたの物語になるかもしれない。
(文責:野良犬黒吉)


■プレスシート全文データ■



a film by MICHAEL WINTERBOTTOM
SAMANTHA MORTON
TIM ROBBINS

CODE46

GAGA



ぼくたちが目指したのは、近未来で展開される究極のラブストーリーを作り上げることだった。サマンサ・モートン、ティム・ロビンス、この2人の出演が『CODE46』の成功を決定的なものへと導いてくれた。彼らがいなければ、この作品は凡庸なものになっていたかもしれない。
◆◆◆◆◆◆◆マイケル・ウィンターボトム

最初に脚本を読んだときに涙が止まらなくなった。これは百万本に一本のラブストーリーよ。
◆◆◆◆◆◆◆サマンサ・モートン

運命であるのに、その必然が道徳的にも法律的にも否定されるんだ。こんなドラマティックなプロットは考えられないね。
◆◆◆◆◆◆◆ティム・ロビンス

映画「CODE46」をとりまく近未来世界
設定1:一部の環境コントロールされた都市以外は砂漠化が進み、ある種の無法地帯となっている。
設定2:都市部と「外の世界」の行き来は厳格に制限され、審査を受けた一部の人間のみに発行されるパペル(パスポートとビザの機能を併せ持つもの)取得者のみが都市間を移動できる。
設定3:オゾン層破壊のため都市部生活者は昼間日光を浴びることを制限されている。
設定4:近未来において法規は絶対であり違法行為をした人間、審査基準にあわない人間は公民権を剥奪され「外の世界」に追放される
設定5:捜査機関に属する一部の人間には「共鳴ウイルス」の服用が許可され、相手の感情を読み犯罪者を摘発することができる。
設定6:社会秩序の維持のため、そのシステムをおびやかす可能性があるとされた記憶は政府の手によって抹消されることがある。

CODE46
【第1条】
同じ核遺伝子を持つ者は遺伝子学的に同一でありすべて血縁とみなす 体外受精 人工授精 クローン技術に際して同じ遺伝子間の生殖はいかなる場合も避けること
従って
1:子作りの前に遺伝子検査を義務づける
遺伝子が100% 50% 25%同一の場合 受胎は許されない
2:計画外の妊娠は胎児を検査すること
100% 50% 25%同一の両親の場合は即中絶せねばならない
3:両親が遺伝子の同一性を知らない場合法規46違反を避けるべく医療介入する
4:同一性を知りながらの妊娠は法規46に違反する重大な犯罪行為である



INTRODUCTION

近未来を舞台に描く、恋人たちの刹那の幸福。
透明感漂うサマンサ・モートンの美しさは、
彼女自身のキャリア史上最高のものと世界の映画祭で絶賛された。
はかなさと激しさが混在する練り上げられたプロットは1秒たりとも観客を飽きさせない。
ウィンターボトムの最新作は、初のSFにして最高傑作!

独自の世界観を確立しながらも、新作を発表するたびに全く新しいテーマに桃戦し、世界の映画ファンから賞賛を浴びてきたイギリスの俊英マイケル・ウィンターボトム監督。彼が本作「CODE46」で挑むのはSF。ただし近未来を舞台にした“ラブストーリー”である。
クローンなどの遣伝子テクノロジーの発展や管理社会の浸透といった現実味のある近未来の設定を活かしながら、古代ギリシャから受け継がれてきた愛を巡る運命やタブーについての物語、あるいは、都会で暮らす男女による犯罪と恋愛というノワール・スリラーの伝統に繋がる物語を、時にムーディーに、時に熱く綴っていく。
環境破壊が進み、都市部に密集した人口を撤底して管理する杜会となっている。パペル(滞在許可証/パスポートとビザの機能を併せ持つ)の偽造事件を調べるため、24時間の許可を得て上海に入った調査員ウィリアム(ティム・ロビンス)は、パペル印刷所で働くマリア(サマンサ・モートン)と出会い、彼女が犯人だと知る。しかし2人は不思議なほど惹かれあい、たちまち恋に堕ちる。それがCODE46に抵触するとは知らずに…。
ウィンターボトムは本作でこれ以上ないキャスティングをすることに成功した。サマンサ・モートンとティム・ロビンス。存在感や演技力、俳優としての旬の勢い。そのどれをとっても申し分なく強力で的確だ。
どこか孤独で影のある、それでいて社会への反抗の精神を秘めた若い女性マリアを、サマンサ・モートンが熱演。ウディ・アレン監督の『ギター弾きの恋』(99)でのショーン・ペンとの共演で初のオスカーノミネート、『マイノリティ・リポート』(02)ではトム・クルーズと共演しメインストリームでも広く知られる存在となった。2度目のアカデミー賞にノミネートされた『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』(02)で、圧倒的な存在感をスクリーンに刻みつけた若手実力派女優が、本作ではティム・ロビンスと堂々と渡リ合うばかりか、作品全体を引っ張るかのような力強いパフォーマンスを展開している。
はじめて訪れた異国の地で20歳近くも年の離れた若い女性に心を奪われ、自宅で待つ妻や息子への想いとの間で引き裂かれる穏やかで繊細な男性ウィリアムを演じるのは、ティム・ロビンス。すでに名優としての評価を確立させて久しいロビンスだが、やはりショーン・ペンと共演したクリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』(03)でアカデミー賞助演男優賞を獲得した勢いそのままに、知的でなおかつ情熱的な中年男性像をさらに渋さを増した演技で披露してくれている。
2人が演じるラブシーンは全ての人の心の奥を締め付ける美しさとせつなさを併せ持った映画史に残る名シーンとなった。

一瞬の相思相愛



STORY

近未来の異国の地、2人は引き寄せられるように出会い、恋に墜ちた。
それはまるで必然であるかのように。

 舞台は環境破壌の進む近未来。徹底した管理社会であるこの世界は、様々な安全が保証される都市部(内の世界)と果てしない砂漠が続く無法地帯(外の世界)を厳格に区別している。したがって一部の認められた人間のみにパペル(滞在許可書一パスポートとビザの機能をもつカード)が発行され外界を通り都市間を移動することができるのだ。
 上海でパペルを審査・発行するスフィンクス社に勤めているマリア・ゴンザレス(サマンサ・モートン)はその日、26回目の誕生日を迎える。毎年、誕生日のたびに同じ夢にうなされてきたが、今夜の夢で自分の運命が決まるという予感に怯える彼女は、一晩中眠らずに夜を明かそうと決意している。事実、マリアにとってまさに“運命の人”との出会いが刻一刻と迫っていたのだった……。
 その頃、シアトル発の飛行機が上海の空港に降り立つ。調査員ウィリアム・ゲルド(ティム・ロビンス)にとって初めての上海。連続して違法パペルが発行される事件がおき、犯人を突きとめてほしいとのスフィンクス社の依頼に応えての訪問だった。共鳴ウイルスの服用を許されている彼は、ほんの短い会話を交わすだけで相手の嘘を見破ることができ、マリアが犯人だと知る。ところが、彼は彼女をかばいスフィンクス社の管理者に虚偽の報告をする。普段は職務に忠実なウィリアムだが、すでにマリアに対して抵抗しがたい感情を抱き始めていたのだった。
 その夜、ウィリアムと食事に出かけたマリアは、動物学者デミアンに違法パペルを手渡す現場を彼にわざと日撃させる。デミアンはコウモリ研究のためにインドヘ行きたいのに何らかの事情―スフィンクス社の“調査結果”により、パペルを入手できずにいたのだ。かつて父親が不祥事を犯し、両親と共に上海の外部に追放された経験をもつマリアは、法を犯してまで安全な都市を飛び出し、自らが信じる道を歩もうとする人々の勇気に共感し、違法パペルを偽造してきたという。管理社会のルールを守ることに何の疑間も持たない生活を続けていたウィリアムにとってそんなマリアの存在は驚きであるとともに、強い魅力を感じずにはいられなかった。
 その日の早朝、マリアの部屋のベッドで二人は身体を重ねあわせる……。
 一晩だけの関係だと白分を納得させ、シアトルで待つ妻と一人息子のもとに戻ったばかりのウィリアムに、再び上海行きの命令が下される。彼が調査したばかりのスフィンクス社から再び違法パペルが発行されたのだ。違法パペルの持ち主デミアンは滞在先のインドで病死した。分析の結果、彼の特殊体質にとってインドはウォーズ病感染の可能性のある危険地帯であったがためにパペルの発行が許可されていなかったことをウィリアムは知らされる。
 再びマリアに接触を試みるウィリアム。しかし、マリアは上海の職場や自宅から姿を消していた。上司の説明によれば、ある“身体的な事情”から、市外にあるマオ・リン・クリニックに移送されたという。詐欺事件の捜査という口実でクリニックに駆けつけたウィリアムに対し、マリアはまるで初対面であるかのように接する。不審に思ったウィリアムが追求すると、“CODE46”違反により、彼女の記憶が全て消去されたとクリニックの医師が告げる。愛し合った記憶がないマリアだったが、それでもまたすぐに、見えないカにひきよせられるようにウィリアムに心を預けるようになる。
 “CODE46”について調べはじめたウィリアムは衝撃と混乱のあまり、その場から一刻も早く逃げ出そうと空港に向かう。しかし、パペルの期限が切れていたため、出発を拒絶される。ウィリアムは市内のマリアの部屋に舞い戻る。今度は、彼のほうから違法パペルの偽造をマリアに頼むために……。メビウスの輪のようにからみあう二人の禁断の愛に果たしてどのような結末が待ち受けているのか?



PRODUCTION NOTES

1.ウィンターボトム的SFは、未来型「究極」の愛
 ウィンターボトムが長年にわたって温めてきた「いつかSF映画を撮りたい」というアイデアの結実が『CODE46』だ。しかし本作にとってSFという設定はストーリーをドラマチックに盛り上げる装置の一つであり、この映画の根底のテーマは別にもあるとウィンターボトムは語る。
 「ただのSF映画だ、と宣言すると、観客は映画のなかで何かものすごいテクノロジーやデザインが登場すると期待するかもしれない。だけど、ぼくたちが目指したのは、今の世界からそんなに隔たりのない近未来、ほんの少しの異質な要素が混在された世界で展開される究極のラブストーリーを作り上げることだった。また本作は大いなるリスペクトを込めて僕が大好きな古典的なノワール・スリラーのスパイスも加えた。調査員ウィリアムは犯罪調査のために上海を訪れ、その犯罪に関与する女性と恋に落ちるんだからね。」
 「もともと僕が考えていたのは二人の人間が愛し合っているにもかかわらず、ある絶対的な理由で一緒にいることが許されないという絶望的なドラマだ。そういった意味ではギリシャ悲劇の名作『オイディプス王』はアイデアソースとして大いに刺激を受けた。究極のタブーに抵触するというのは最高にエキサイティングだからね。『カサブランカ』(42)や『逢びき』(45)といった映画の古典からもインスパイアを受けた。運命との対峙は今回のドラマのまさにキーといえるから」
 ウィンターボトムが初挑戦したSFは近未来を描きながらも、一方で数々の古典的な名作のエッセンスを吸収し到達した、まさに完成された1本となった。

2.最高のストーリーを彩る最高のキャスティング
 2人の実力派俳優のうち、先に脚本を読み、出演に名乗リをあげたのは、サマンサ・モートンのほうだった。
「最初に脚本を読んだときに涙が止まらなくなった。とてもすばらしい、百万本に一本のラブストーリーよ。だけど、それでいて安っぽいデートムービーじゃない。愛とは何なのか、相手をどれだけ愛せるか、人を愛することがどんなにすばらしいことか、といったことを思い起こさせてくれる映画よ。私は若いとき、大学に通うバスのなかで座リながら、『未来に私の夫になる人がこのバスに乗っていて、ただ私がそれを知らずにいるだけかも…』と想像していたわ。まさにそれが『CODE46』の物語なの。曲がり角の先に何があるのかさえ私たちにはわからない……といった人生の真理について物語る映画なのよ」
 それから間もなくしてティム・ロビンスが加わる。
「遺伝子や記憶操作、クローンといった、通常はロマンスに不似合いとも思える未来的な設定のもとで、ラブストーリーを語るアイデアにまず新しさを感じ惹きつけられた。確かに、44歳の男性が26歳の女性にのぼせ上がる話といってしまえば簡単だ。だけど、これは二人の人間のとても強い愛情についての物語であって、二人は一緒になるよう運命づけられている。でも、それができない。運命であるのに、その必然が道徳的にも法律的にも否定されるんだ。こんなドラマチックなプロットは考えられないね。」
 ウィンターボトムは、このキャスティングが、本作の大いなる成功になくてはならなかったものだと語る。
「この物語のなかでマリアは、社会のルールに逆らって生きようとし、命令されることを好まず、したいことをすべきだと信じるタイプの人間だ。だが社会はそれを許さない。彼女はそういう意味で犯罪者だ。だから彼女は社会の外側へと人を導こうとする。大胆で、活き活きとしたエネルギーを発散するサマンサには、そうした映画を引っ張るようなパワーが備わっている希有な女優だ。また、ティム・ロビンスは、体制側に属する人間の複維な心情をこれ以上ない表情で表現してくれた。この2人の出演がなければ『CODE46』は凡庸な作品になったかもしれない。それくらい彼らの役割はこの映画にとって、とても大きなものだったんだ。」

3.セットでは表現できない未来感溢れるリアル都市
 莫大な費用でスタジオに未来的なセットを築くことなど、製作者たちは一瞬たりとも考えなかった。むしろセットを避けることが、よりリアルな未来を創造できると彼らは考えていた。プロダクション・デザイナーのマーク・ティルデスリーはこう語る。
「全てを想像し、組み立てなければならない『ブレードランナー』(82)のようなセットを“作る”より、今と変わらぬ未来であるべき場所を“発見”することにお金をかけようとぼくたちは決めた。マイケルが提案した未来は、世界で最も現代的な高層ビル群の影に第三世界の貧窮がうごめいている上海と、高層ビルの真後ろに広大な砂漠が広がるドバイ。そうした異質な要索の並列が、魅力的な効果を映画にもたらしてくれた」
人物や空間への鋭い観察に基づいて映画を生み出し続けるウィンターボトムは「僕にとってロケーションはとても大切だよ。撮影場所が決まらないと、物語を身近なものにすることができない。だから、場所についての感覚をはっきリさせないまま、物語やキャラクターについて語ることがぼくには難しい。スタジオに完全な人工の未来世界を築いたとしても、僕にとって――そして、僕の映画にとって――それはあまリうまく機能しなかっただろう、と思うね」と付け加えた。
 『CODE46』での未来世界が圧倒的な質感と個性を放っている理由は実在する個々のロケーションから最も面白く思える場所を少しずつ切り取り、それらをウィンターボトム独自の優れた感覚でコラージュすることにより全く新しい世界観を提示しているからだ。



CODE46の持つ
SF的記号を共有する映画たち

クローン人間
未来世界」リチャード・T・ヘフロン/1976
スター・ウォーズ」ジョージ・ルーカス/1977
ブラジルから来た少年」フランクリン・J・シャフナー/1978
エイリアン4」ジャン=ピエール・ジュネ/1997
シックス・デイ」ロジャー・スポティスウッド/2000
記憶操作
トータル・リコールポール・ヴァーホーヴェン/1990
JM」ロバート・ロンゴ/1994
メン・イン・ブラック」バリー・ソネンフェルド/1997
ペイチェック/消された記憶」ジョン・ウー/2003
感情管理・感情抑制
華氏451」フランソワ・トリフォー/1966
時計じかけのオレンジスタンリー・キューブリック/1971
THX−1138」ジョージ・ルーカス/1971
ローラーボール」ノーマン・ジェイソン/1975
バトルランナー」ポール・マイケル・グレーザー/1987
リベリオン」カート・ウィマー/2002
情報支配・管理社会
アルファヴィル」ジャン・リュック・ゴダール/1965
スリーパー」ウディ・アレン/1973
未来惑星ザルドス」ジョン・ブアマン/1973
未来世紀ブラジルテリー・ギリアム/1985
ガタカ」アンドリュー・ニコル/1997
マトリックス」アンディ&ラリー・ウォシャウスキー/1999
マイノリティ・リポートスティーブン・スピルバーグ/2002
人口抑制・出生管理
赤ちゃんよ永遠に」マイケル・キャンパス/1971
ソイレント・グリーン」リチャード・フライシャー/1973
2300年未来への旅」マイケル・アンダーソン/1976
侍女の物語」フォルカー・シュレンドルフ/1990
細菌汚染
地球最後の男 オメガマン」ボリス・セーガル/1971
12モンキーズテリー・ギリアム/1995
28日後…」ダニー・ボイル/2002

作:野良犬黒吉(GeneralWorks)
SF MOVIE DATABANK 企画・運営・編集
www.generalworks.com



CRITIC

白分の行動の結果が予測できるとしたら
戸田誠二(漫画家)

 切ないまでに淡々としている。それゆえに何かをかきたてられる、そんな映画だ。この映画は、男女の話だからといって「恋愛」というキーワードだけでは捉えきれない、多くのモチーフを含んでいる。そして行動を起こす登場人物たちの心情が丁寧に説明されることもない。さまざまなモチーフと状況の中で、自分が彼らならどんな気持ちだろうか、そんなことを自分に問いたくなる映画だ。
 舞台は環境破壊が進んだ近未来。撤底管理され、安全が保証された「中」と、砂漠が線く荒んだ「外」の世界に厳格に分けられる。「外」の人間は「中」に入れず、「中」の人間もパペルが発行された場合に限リ「外」に出られる。調査機関に所属するウイリアムは、違法パペルの密売事件を調査中、マリアに出会う。彼女が犯人であることをつきとめるが、恋に落ち、やがて遣伝子に関わる重要な法規、CODE46を犯すことになる。
 CODE46。それはこの架空の世界でのみ起こりうることではなく、ずっと以前から生物が抱えてきたタブーともいえることの1つでもある。
 ――違法パペルを使ってまでわざわざ危険な「外」の世界に出たがる人間の心理とは何なのか。そして犯人と知りつつ、重罪と知りつつ、その法規違反を犯す人間の心理とはどのようなものなのだろうか。
 このようなセリフがある。「もし自分の行動の結果が予測できるとしたら、結果がわかっていても同じように行動するだろうか」。自分だったらどう思い、どうするだろうか。
 この世界は撤底管理されているのに、不安定さを感じずにはいられない。科学が進み、自分が知リたくないことまで知ることができ、さらには知リたくないことは脳から記憶を消去できるほど進んだ世界。「中」の人間は社会全体にとって都合の悪い記憶を消され、記憶の改ざんによって安全で幸せな生活を保証される。だが記憶とは、白分の歴史の一部であリ、いわば自分の一部である。自分を改ざんしてまで保証される幸せとは何なのだろうか。その幸せは間違いなのか、あるいは間違いではないのか。違法カードを使って「外」に出た人間が求めたものはもしかしたらそのようなものだったのかもしれないと思わされる。
 映画のほぼ全般をブルーを基調とした色あせた映像が紡ぎ、自分がゆらぐというその不安定さを巧みに表現している。常につきまとうウィリアムとマリアの不安、そしてその世界のもつ不安。次第にそれと対比して、むしろ危険であるはずの「外」の世界が生き生きと見えてくる。映画シーン中、もっとも生々しく迫カのあるシーンがある。その世界で「生きている」という生々しさをそこで初めて見る気がした。
 CODE46の法規違反を犯した彼らの記憶から、その事実を消去することが幸せなのか、そうではないのか。映画ではその解答は与えてくれない。すでに言ったように、切ないほど淡々と、かきたてるように描かれているだけだ。ゆらぐ世界の中で、それを判断するのはあなた自身だ。本当に間題なのはタブーを犯すことではない。それを受け入れる覚悟があるのか、ないのかである。あるいは、自分の行動が常に、それと同じ覚悟を持ったものなのか、違うのかだ。
 「自分の行動の結果が予測できるとしたら、結果がわかっていても同じように行動するだろうか」。あなたが選ぼうとするその相手とキスできるだろうか、セックスできるだろうか、そしてCODE46を犯せるだろうか。あなただったらどうするのか、その目で碓かめて欲しい。

PROFILE
戸田誠二
漫画家。会社員を経た後、漫画の執筆活動に専念。同時に個人サイト「COMPLEX POOL」を開設し、インターネット上でも漫画作品の公開を始める。サイトの作品をまとめ、単行本「生きるススメ」(宙出版)を出版。現在は「Hiミステリー」(宙出版)にて連載中。



MUSIC

絶妙の選曲。胸を締め付けるメロディーたち。
赤尾みか(音楽ライター)

 本作で音楽を手がけているジ・フリー・アソシエイションは、デヴィッド・ホルムズとスティーブン・ヒルトンによるユニットで、『オーシャンズ11』(01)や『アナライズ・ユー』(02)等の音楽も彼らの手によるものである。北アイルランドはベルファスト出身のデヴィッド・ホルムズの名前は、ロック・ファンにとっては馴染みが深い。自らDJ、ミュージシャンとしても活躍する彼のアルバム『エグジッド・サイン』にはボビー・ギレスピー(プライマル・スクリーム)やジョン・スペンサーが参加、ギレスピーが歌った「シック・シティ」は、後にプライマルの『エクスターミネーター』にも収録された。またホルムズはマニック・ストリート・プリーチャーズやセイント・エティエンヌらのリミックスも手がけている。一方のスティーブン・ヒルトンはデペッシュ・モードやペット・ショップ・ボーイズらの作品に関わってきた人物てある。
 ウィンターボトム監督が作り上げた近未来世界にふさわしい、エレクトロニカなクール・サウンドはホルムズやヒルトンが得意とするところであるが、ここで鳴らされる音楽は、決して激しい白己主張はしない。静謐な空気を壊すことなく控えめに、痛々しいまでの愛の物語を見守っている。ふとした瞬間、耳をよぎるこれらの音楽に気づいたなら、美しい映像の端々からこぼれる混乱や戸惑い、絶望や喪失といったものが鮮やかに際立つに違いない。ちなみに、ダンスフロアのBGMに流されているのは、ホルムズ&ヒルトンの曲ではなく、ファットボーイ・スリムことノーマン・クックによるユニットのひとつフリークパワーの「ソングNo.6」である。
 また、イスラム教スーフィー派の宗教音楽カッワリーの第一人者として知られるヌスラット・ファテ・アリ・ハーンが音楽を手がけ出演もしたインド独立50周年記念映画『…Aur Pyar Ho Gaya』(97)から「Thodasa Pagla」を用いている辺リには、映画全体に漂うある種の無国籍感覚が反映されているとも言えそうだ。
 序盤のクラブでのシーン。カラオケで男がへたっぴな「ステイ・オア・ゴー」(ザ・クラッシュ)を聴かせてるなあ、と思いきや、なんとミック・ジョーンズ本人によるカメオ出演だったのには驚いた。曲は、主人公ウィリアムの心情とリンクしているようでもあるが、このシーンは本作唯一の笑いどころ!? 心情にリンクという点では、ラストに切々と流れる「ウォーニング・サイン」はよリ重要な役割を担っている。世界的な大成功を収めたブリティッシュ・パンド=コールドプレイ(シンガーのクリスは女優グウィネス・パルトロウの夫としても有名)によるこの曲は既成曲であリながら、マリアの心の内を強く観衆に訴える。さらに、ウィリアムとマリアが口ずさむ「ノー・ウーマン・ノー・クライ」(ボブ・マーリィ)の選曲も絶妙で、胸が締め付けられる思いである。



サマンサ・モートン
 1977年、イギリス・ノッティンガム生まれ。演劇学校に学びながら、13歳からテレビ・ドラマヘの出演を始める。『The Future lasts a long time』(96)で映画デビューを飾った後、カリーヌ・アドラー監督『アンダー・ザ・スキン』(97)での主演で、脚光を浴びた。
モートンの国際的な知名度を高めたのは、ショーン・ペンと共演した、ウディ・アレン監督作品『ギター弾きの恋』(99)。不器用な天才ジャズギタリストと恋に落ちる、口のきけない可憐な少女を好演した彼女は、アカデミー賞助演女優賞、ゴールデン・グローブ賞他数々の賞にノミネートされた。
 その後も、ジュリアン・テンプル監督による『Pandaemonium』(00)やアーサー・ミラーによる原作を第二次世界大戦下のパレスチナに舞台を置き換えて撮影されたイスラエルのアモス・ギタイ監督作品『Eden』(01)などでキャリアを積み、スティーブン・スピルバーグ監督による大作『マイノリティ・リポート』(02)では、予知能カをもつ存在“プリコグ”役として物語全体の鍵を握る役を演じ、トム・クルーズとの共演を果たした。
イギリスの新鋭女性監督リン・ラムジーの『モーヴァン』(02)では、同居していた恋人の死をきっかけに、ヨーロッパ各地を放浪する、感性の鋭い十代の女性を見事に演じきった。名匠ジム・シェリダン監督の『イン・アメリカ 三つの小さな願いごと』(02)では、かつて幼い息子を失った悲しみを未だに引きずる若い母サラを演じ、世界中で高い評価を受け、アカデミー賞助演女優賞に2度目のノミネートとなる。現在、英国出身の個性派着手女優として最も注目を集めている。

ティム・ロビンス
 1958年10月、カリフォルニア州ウェス・コビナ生まれ。UCLA演劇科を卒業後、82年ロサンゼルスを拠点に活動する前衛的な演劇集団アクターズ・ギャングの共同創立者となる。
 俳優としては、後に公私にわたるパートナーとなるスーザン・サランドンと共演したロン・シェルトン監督『さよならゲーム』(88)やエイドリアン・ライン監督『ジェイコブス・ラダー』(90)などで注目を集め、92年には、ロバート・アルトマン監督の『ザ・プレイヤー』(92)で道徳性を欠いた映画スタジオの重役を好演、カンヌ国際映画祭の最優秀男優賞やゴールデングローブ賞ミュージカル/コメディ部門の最優秀男優賞を受賞、同年、監督や脚本も担当した『ボブ・ロバーツ』(92)でも、ゴールデングローブ賞最優秀男優賞にノミネートされ、実力派俳優としての地位を確固たるものとした。
 その後の主演作品としては、再びロバート・アルトマン監督とのコラボをはたし、2度目のゴールデングローブ賞に輝いた『ショート・カッツ』(93)、『ショーシャンクの空に』(94)、ジョエル・コーエン監督の『未来は今』(94)、『ヒューマンネイチュア』(01)など。少年時代に受けたトラウマを引きずる謎めいた中年男性を演じた、クリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』(03)で本年度のアカデミー賞助演男優賞を受賞。なお、彼の監督作には、ショーン・ペン演じる死刑囚とスーザン・サランドン演じる修道女の間で芽生える極限状態での交流を描き、サランドンにアカデミー賞主演女優賞をもたらした『デッドマン・ウォーキング』(95)、1930年代にオーソン・ウェルズが制作したミュージカル劇の裏側を描き、カンヌ映画祭で上映されたほか、いくつもの賞に掲いた『クレイドル・ウィル・ロック』(99)がある。

ジャンヌ・バリバール
 1968年パリ生まれ。本作では夫の過ちを知りながらもそれを口にすることが許されないティム・ロビンスの妻を演じる。出演作に『魂を救え!』(92)、『そして僕は恋をする』(96)、『発禁本 SADE』(00)、『恋ごころ』(01)などがある。なお、歌手としてもフランスでアルバムを発表している。

オム・プリ
インド出身。本作でスフィンクス社の依頼人を演じる。本国ではアート映画に主に出演する俳優として知られ、国際的な知名度を高めた現在も低予算アート映画への出演を続けている。リチャード・アッテンボロー監督の『ガンジー』(82)でガンジーと対立する男の役で注目され、イギリスやハリウッドなどの英語圏で活躍。ダミアン・オドネル監督の『ぼくの国、パパの国』(99)では、ロンドンで暮らすパキスタン人一家の家長を好演し、BAFTA(英国アカデミー賞)最優秀男優賞にノミネートされた。

監督一マイケル・ウィンターボトム
 1961年3月29日、イギリス・ブラックバーン生まれ。オックスフォード大学では英文学を専攻、ブリストル、ロンドンで映画制作を学んでテレビ界入り。ドラマ・シリーズ、『Family』(94)の演出で数々の賞に輝いた。そこでコンビを組んだプロデューサーであるアンドリュー・イートンとレヴォリューション・フィルムズを設立、映画界進出への足場を築くことになった。同社でテレビ用に制作されたロバート・カーライル主演『GO NOW』(96)は、エジンバラ映画祭で喝采を浴びた。デビュー作『バタフライ・キス』(95)は、アマンダ・プラマー主演の連続殺人犯を描くロードムービーで、ベルリン映画祭にも出品。翌年に公開されたダニー・ボイル監督の『トレインスポッティング』(96)らと共に、“新しいイギリス映画”を代表する作品と見なされ注目を集める。その後は、ケイト・ウィンスレット主演作で、エジンバラ映画祭最優秀英国映画賞を獲得した『日蔭のふたり』(96)、旧ユーゴスラビアのボスニア内戦を舞台にした政治ドラマ『ウェルカム・トゥ・サラエボ』(97)を発表。一転して、ハードな男女の性愛を描き、ベルリン映画祭へ出品された『I WANT YOU あなたが欲しい』(98)や、ラブ・コメディ『いつまでも二人で』(99)を経て、『ひかりのまち』(99)では、手持ちカメラを基調とするウィンターボトム作品の現在に至るスタイルがほぼ確立された。
 ミラ・ジョヴォヴィッチを主演にアメリカで制作された『めぐり逢う大地』(00)では、文芸映画に大胆なアプローチで挑戦。続く『24アワー・パーティ・ピープル』(02)では、マンチェスターで展開されたロック・ミュージックの革新の動きを、軽妙な群集劇タッチで巧みに綴ってみせた。ベルリン映画祭で金熊賞、エキュメニック賞、ピースフィルム賞の3賞に輝いた前作『イン・ディス・ワールド』(02)は、パキスタンの難民キャンプからロンドンヘの困難な長旅に臨む2人の少年を主人公にしたドキュメンタリースタイルのロードムービー。本作に直接つながる世界観が描かれると同時に、戦乱の続く現在の世界への怒りや批判を効果的に表明することにも成功した。なお、最新作『Freedom』(04)は、モーガン・フリーマンとジュリアン・ムーアという人気スターの共演作。またもやウィンターボトムが新たな境地を切り開く作品として期待される。

製作一アンドリュー・イートン
 1959年、北アイルランド生まれ。BBCで主にドキュメンタリーの監督・製作のキャリアを積み、94年にロディ・ドイル脚本のテレビドラマ・シリーズ『Family』でウィンターボトムと出会い、意気投合した2人はレヴォリューション・フィルムズを設立。以降、イートンはウィンターボトム作品の製作者としてその名を知られるようになる。

脚本一フランク・コトレル・ボイス
 『CODE46』以前にも、『バタフライ・キス』(95)、『ウェルカム・トゥ・サラエボ』(97)、『めぐり違う大地』(00)、『24アワー・パーティ・ピープル』(02)でウィンターボトムと緊密なコラボレーションを展開してきた。他の監督との仕事として、アナンド・タッカー監督『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・ブレ』(98)、アレックス・コックス監督『リベンジャーズ・トラジディ』(02)などがある。

撮影一アルウィン・カックラー
 リン・ラムジー監督との共同作業で知られ、初期の短編映国3本『Small』、『Death』、『Kill the Day and Gasman』を撮影した後、長篇劇映画2本『ボクと空と麦畑』(99)と『モーヴァン』(02)の撮影も担当。99年にはドキュメンタリー部門でアカデミー賞を受賞したケビン・マクドナルド監督の作品、『One Day in September』を撮影。ウィンターボトム作品としては、『めぐり逢う大地』(00)にも参加している。

撮影―マルセル・ザイスキンド
 イギリス、スペイン、スウェーデン、デンマークとヨーロッパ各地で数多くの仕事をこなしてきたキャリアを持ち、カメラ・オペレーターとして参加した主な作品に、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)、『24アワー・パーティ・ピープル』(02)、『28日後…』(02)がある。ウィンターボトム監督の前作『イン・ディス・ワールド』(02)で撮影監督として本格的なデビューを果たした。

美術―マーク・ティルデスリー
 キャッチ22シアター・カンパニーを設立後、演出・美術等で活躍し、ニュー・ヴィック・シアター・カンパニーやロイヤル・オペラ・ハウスの舞台美術を手がけてきた。本作以前にも、『I WANT YOU あなたが欲しい』(98)、『ひかりのまち』(99)、『めぐり逢う大地』(00)、『24アワー・パーティ・ピープル』(02)といったウィンターボトム作品に参加している。他の監督との仕事では、ダニー・ボイル監督『28日後…』(02)がある。

編集一ピーター・クリステリス
 アシスタント編集者として、『バタフライ・キス』(95)、『GO NOW』(95)、『I WANT YOU あなたが欲しい』(98)、『いつまでも二人で』(99)に、視覚効果として、『めぐり逢う大地』(00)に参加した後、『イン・ディス・ワールド』(02)で編集者として独り立ちを果たし、本作の編集も担当した。

衣装―ナタリー・ウォード
 ウィンターボトム作品としては、『GO NOW』(95)、『I WANT YOU あなたが欲しい』(98)、『ひかりのまち』(99)、『24アワー・パーティ・ピープル』(02)に参加。他の監督との主な仕事として、ダニー・ボイル監督『ザ・ビーチ』(00)、シャロン・マグワイア監督『ブリジット・ジョーンズの日記』(01)、パトリス・シェロー監督『インティマシー/親密』(00)などがある。

音楽―The Free Association
 ベルファースト生まれの作曲家デヴィッド・ホルムズが、スティーブン・ヒルトンと結成。ライブや映画のサントラなどの仕事に携わるなどして、活動の場を広げている。
 ホルムズはDJとして名を馳せた後に、初めてのソロアルバム「The Films Crap,Let's Slash the Seats」をリリ一ス、ここに収録された数曲が、デヴィッド・フィンチャー監督の『ゲーム』(97)や『ジョー・ブラックをよろしく』(98)のサントラや予告編に使用されたことをきっかけに、映画音楽の世界に進出。スティーブン・ソダーバーグ監督『アウト・オブ・サイト』(98)や『オーシャンズ11』(01)などの音楽を作曲した。



CAST
Maria GonzaLez : Samantha Morton
William Geld : Tim Robbins
Backland : Om Puri
Sylvie : Jeanne Balibar
Damian Alekan : David Fahm

STAFF
Director : Michael Winterbottom
Producer : Andrew Eaton
Script Writer : Frank Cottrell Boyce
Director of Photography : Alwin Kuchler Bsc
Director of Photography : Marcel Zyskind
Production Designer : Mark Tildesley
Editor : Peter Christelis
Costume Designer : Natalie Ward
Music : The Free Association

キャスト
マリア・ゴンザレス:サマンサ・モートン
ウィリアム・ゲルド:ティム・ロビンス
バックランド:オム・プリ
シルヴィー:ジャンヌ・バリバール
デミアン・アレカン:デヴィッド・ファーム

スタッフ
監督:マイケル・ウィンターボトム
製作:アンドリュー・イートン
脚本:フランク・コトレル・ボイス
撮影:アルウィン・カックラー
撮影:マルセル・ザイスキンド
美術:マーク・ティルデスリー
編集:ピーター・クリステリス
衣装:ナタリー・ウォード
音楽:ザ・フリー・アソシエーション

CODE46
2003年/イギリス/93分/シネマスコープ/DOLBY SR/DOLBY DIGITAL/字幕翻訳:松浦美奈
提供・配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
宣伝:ギャガGシネマ海×ミラクルヴォイス
協力:アットエンタテインメント NUMBER (N)INE
www.code46.net GAGA


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