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「赤ちゃんよ永遠に」


■解説・ストーリー
 とどまることのない人口増加によって、二十一世紀の地球は、大気の汚染、食料生産の限界、天然資源の涸渇という、かつてない危機に瀕していた。このため緊急措置としてとられたのが三十年間にわたる出産禁止令であった。赤ちゃんを生み、育てるという本能的な歓びを奪われた人々は、“赤ちゃん人形”を愛玩することで、その喝きを癒していた。
 こうした苛酷な状況のなかで、若い一組の夫婦が密かに赤ちゃんを生んだのだ。医者を呼ぶこともなく地下室で出産し、他人の密告を怖れての気を張りつめた育児。それ故に湧き上がるひたむきな愛情―。
 人類がいつの間にか落ちこんでいった不幸の怖しさを、絵空ごととしての未来ではなく、科学的根拠にもとずいた戦慄的な生活として描くとともに、赤ちゃんを生み、育てるという抑えることのできない人間的欲求の強さを感動的に訴えかけた異色の秀作である。
 監督はテレビのドキュメンタリー番組出身の新鋭マイケル・キャンパスがあたり、主役の若い夫婦には、「恋する女たち」「肉体の悪魔」のあオリバー・リードと、「ドクトル・ジバコ」のジェラルディン・チャップリンが扮している。なお、原題の「Z・P・G」は「ZERO POPULATION GROWTH」(人工増加率ゼロ)の略である。
 二十一世紀のある年、人々は次の様な世界連邦会議の決定を聞かされた。
 「今後三十年間、すべての出産を禁止する。違反者は死刑・・・」
 たえまない人口増加は、人類の存亡に重大な危機をもたらしていた。大気の汚染のため、人々は外出する時はマスクを使用しなければならなかったし、食料は不足して配給制であった。これ以上、人口が増加することには耐えられなかったのだ。
 ラス・マクニールと妻のキャロルは、博物館の職員だったが、他の若い夫婦同様自分たちの子供が欲しかった。そうした人々のために“赤ちゃん人形”という精巧なロボットが販売されていた。それは体温もあり、軽い病気にもかかり、歩いたり、母親の名を呼ぶこともできた。だが、それは所詮ロボットにすぎなかった。キャロルも一度それを購入しようと思ったが、やりきれない気持になってやめた。密かに赤ちゃんを生む者もいたが、それも隣人の密告で露見し、親子ともども窒息刑に処せられた。人々には赤ちゃんに対する飢餓感が溢れ、嫉妬と猜疑で多少とも狂的状況に陥っていた。
 クリスマスの夜、キャロルはラスに妊娠を告げた。彼女も赤ちゃんを欲するあまり、わざと避妊処置をしなかったのだ。ラスは驚いたが、妻の気持を理解すると、地下壕を改造してキャロルを隠した。他人には妻と別居したと嘘をついた。出産の日は近ずいたが、医者は呼べなかった。出産に対する保安警察の監視は厳しく、資料を調べただけでも尋問を受けた。
 ラスとキャロルは二人だけで地下室での出産を終えた。元気な男の子だったが、これからは人目を避けて育児しなければならなかった。ある日、赤ちゃんが高熱を出した。キャロルは赤ちゃんを隠すようにして街に出て、かねてより懇意の老医師のもとに連れて行った。幸い病気は心配するほどのことはなかったが、家に帰ったとたん、バッタリとエドナに会ってしまった。赤ちゃんを発見されてしまったのだ。だがエドナは絶対口外しないから赤ちゃんを抱かせてくれと頼んだ。今まで何とか人形で気持をまぎらわせていたエドナだったが、本物を抱いたとたん、それも崩れた。エドナ夫妻はやがて、抱いたりあやしたりするだけではなく、四人の共通の子供にしようといい張った。それはキャロルたちには許せないことだった。拒否されたエドナは半狂乱となり、街へ出て「赤ちゃんがいる!赤ちゃんだ!」と叫んで回った。たちまち保安警察がやってきて、ラスとキャロルは逮捕された。だが、この日のあることを予想していたラスは、処刑場の地下に脱出路を作っておいた。三人は穴を掘り、排水路へ出るとゴムボートを利用して逃がれて行った・・・。

監督・・・・・マイケル・キャンパス
製作・・・・・トマス・F・マディガン
音楽・・・・・ジョナサン・ホッジ
       ジェラルディン・チャップリン
       オリバー・リード
       ダイアン・シレント
Directed by・・・Michael Campus
Produced by・・Thomas F. Madigan
Music by・・・・・Jonathan Hodge
       Geraldine Chaplin
       Oliver Reed
       Diane Cilento

■カラー作品・アメリカ映画
赤ちゃんよ永遠に
日本ヘラルド映画


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