(己が弟子を手玉に取った男)
ネモはその事が頭から離れなくなっていた。
取り巻き達のおべんちゃらにもそろそろ嫌気がさして来ていた。
「おい!ジョージ!!この間其方を打ち負かした男は確かに地球に行ったのだな」
その気になったネモが地球に行く為の手配は、苦労しなくても取り巻き達がお膳立てしてくれた。
地球に降り立ったネモはクワンを見つけると執拗に仕合を迫った。
弟子がやられたという
[ のがれられぬ攻撃 ]
がどうしても気になっていたのだ。
「クワンが何ほどのものか。逃れられぬ攻撃などと言う都合の良い物など在ろう筈がないのだ」
ネモは汚い手口を使ってでも立ち会うつもりだ。執拗に仕合を迫った。
このままでは周囲の環境調査団にも迷惑が掛かり、自分も静かに余生どころで無くなるので、仕方なくクワンは試合を受ける事にした。
マンハッタン島には木枯らしが吹き荒れていた。
嘗て都市の中心にあり、市民のオアシスであったセントラル・パークが今回の試合の舞台である。
風に舞い上がる落ち葉が決闘の気分を盛り上げていた。
五人ほど引き連れて来た弟子達は幾分緊張しているようだが当のネモ本人は落ち着き払っていた。
「どだい儂が負ける筈が無いのだ」
そう疑わずに堂々と立つネモの姿は、弟子達にはとてつもなく巨大に見えた。
その時である。池の脇からクヮンが一人で現れた。
「一人で来たのか。良い覚悟だ」
ネモが言うのと同時に、対面している二人は略同時に歩ヒョウを纏った。
吹荒れていた木枯らしが一瞬止んだ刹那!!
ネモが仕掛けた。いや、性格に言うと仕掛けたつもりであった。
ネモは己の必殺技 [ 第三の手 ] を振るったはずだった。
しかし、、
クヮンの飾り気の無い歩ヒョウが、ゆるりと出て拳を打つと、ネモの歩ヒョウ [ シンバ ] はガクリと倒れて動かなくなった。
クヮンにとっては相手の腕が何本であるかなど問題では無かったのである。
ただ漠然と
(打つべき所を打った)
それだけであった。
倒れた [シンバ ] に止めも刺さず、クヮンは歩ヒョウの纏いを解くとその場に背を向けて去って行った。
---つづく---