『第三の手』-弐-


「天下無双のネモ先生!!」

数十人の取り巻きが一斉に杯を掲げた。
金糸をふんだんに使った贅沢なジャケットを着て姿勢の良い男が上座に座っている。
この男、名をネモと言う。
蔦拳を使うこのインド系の男は、アンヘル・ストロダイムの直弟子であったが、後年は気合い術を修練していた。
青銅の歩ヒョウ [ シンバ ] は今では

「向かう所敵無し」

と言われている。

事実、この頃のネモは桁外れに強くなっていた。

今日も立ち会いを挑んで来た [ ロン某 ] とか言う男を一撃で倒してしまった。
歩ヒョウで構えた [ ロン某 ] はいきなり六本に増えた腕の連撃に手も足も出せずに敗退してしまった。

気合い術を駆使した [ 第三の手 ] なる必殺技は未だ破られた事が無かった。
この [ 第三の手 ] は圧倒的な眼力をもって己の歩ヒョウの腕を相手に
[ 六本腕 ]
だと思い込ませてしまう。
この真しやかに幻術チックな技は実戦ではことのほか効果的で、

「上泉でも敵わないのでは」

などと褒めるものまでいた程である。
実業家としても成功しているこの男であるから、必然的にこのような取り巻きに囲まれるようになる。

「ネモ先生はご立派な方ですから投資するのです」
「ネモ先生こそ武道家の鏡ですなぁ。ぜひお近づきに、、」

などと褒められ続けているうちに少なからず [ 慢心 ] が生まれる。
それを象徴する様な事件が起きる。

弟子の一人に、ヒョウ師の [ ジョージ某 ] と言う男がいて、この男が先日、宇宙港でとあるヒョウ師と立ち会い破れたのだと言う。
「ゆったりと動いているのに、何故かこちらの攻撃は当たらず、面白い様に向こうの思い通りに試合が運び、何もわからないうちに倒されている」

この話を聞いたネモはその相手のヒョウ師に興味をもった。

「その男と私とどちらが強いと思うかね?」

(もちろん先生が負かされる様な事は無いでしょうが、強い相手でした)
位の返事が返って来ると思って聞いてみたのであるが、、

「・・・・」

ジョージは真顔で黙りこくってしまったのである。
これにはネモも少し腹が立ったのであろう。

「それほど強いなら是非立ち会ってみたいものだ」

感情は表には出さぬが、その相手を打ち負かしたいと強く思い始めていた。

---つづく---