『第三の手』 -壱 -

クヮンは、ヒョウ師である。
中国系の二十七歳のこの青年は
真天狗拳の使い手で、その腕前は [ 気 ] を相手に戦える程のモノであった。
装飾の少ないツルリとした白い歩ヒョウを纏う。
この歩ヒョウには名が無く、いかにも飾り気の無い性格のクヮンらしいので、知人からは

「歩ヒョウの名前もクヮンでいいんじゃね」

と、本人と同じ名前で呼ばれていた。

 今日、彼は、地球圏では一番権威のある連邦立病院の一室に居た。
ここの二週間ほど妙な微熱が続いたので、念のため検査に来たのだ。

「先日のスキャンの結果がでました。結論から言うと、kーショック症候群です。残念ですが、、」

顔つきはにこやかに、しかし目の表情は真剣そのものに医師は言った。

「一般では治療法は無いと言われてますが、、、」

「残念ながらその通りです。最近の一般情報はだいたい正しいですよ、、」

まさか自分が不治の病であったとは!
しかもこの病は死の病である。その日は混乱してしまい訳が分からなかった。

クヮンはその後二日ほどひどく悲しんだが、三日目の朝になると落ち着いて来たので、荷物をまとめて、宇宙港に向かった。
小さい頃、祖母がよく言っていた言葉を思い出したのだ。

「家のルーツはマンハッタンと言う小さいけど大きなな島の出なんだよ」

あと何年生きられるか、そう考えた時に、

(地球へ行こう。行くならルーツであるマンハッタンに行ってみよう)

と何の気なしに思いついたのであった。

(いい所だったら、余生をそこで過ごすのもいいんじゃないか)

そう思っているクヮンなのである。

---つづく---